EURO決勝を賭けた第1戦目。
グループリーグはギリギリ。トーナメントもイマイチ安定感の欠けるフランス。特にエムバペのコンディションが上がらない。
一方、ニコ・ヤマルを筆頭に組織としての完成度も高く、一番優勝に近いチームスペイン。
見事に『ハマっている』チームが勝ち残る展開となった。
だが、スタートは違った。
スペインはドイツ戦の死闘で主力が出場停止。
特にカルバハルが出場できないことが痛手となった。代わりにスタメンに名を連ねたのが37歳の大ベテランヘススナバス。
前半9分にその入れ替わりで問題が起きる。エムバペへのロングボールをオフサイドを取りきれず、マンツーで対応しに行くも縦の突破が怖く後1歩踏み込めない。
その隙を見逃さず1つ内側にボールをずらしたエムバペは中にクロスを入れてコロムアニが合わせる。
スタメンの変化がフランスの良い方向に流れる結果となり、今大会を通して上手くいってないフランスにとって値千金のゴールになるかと思われた。
しかし、今年のスペインには神童がいた。
21分、右サイドからカットインしてラビオを置き去りに左足でコントロールショットを左隅に決めて見せた。
16歳と362日、ユーロ最年少ゴールを更新したラミン・ヤマルだ。
ここからフランスに傾いていた流れがガラッと変わる。モラタを中心にハイプレスから中央のロドリまで誘導して刈り取る。ファビアンルイスとロドリを中心に巧みなポゼッションで組み立てる様に。
するとその4分後、失点に絡み上手く機能していなかったヘススナバスが彼の輝きである細かなドリブルとクロスからチャンスメイク。
半歩ずらして早めに送ったクロスをフランスがクリアしきれず。
そのこぼれ球を拾った、今大会注目株のペドリがかすむほどの大仕事をやってのける選手がもう一人いた。
スペインの10番ダニ・オルモである。
浮いたこぼれ球を巧みに右アウトでコントロールして右足一閃。
高速なボールをゴール方向に追っていたクンデもクリアしきれず。
5分間でスペインが逆転した。
この逆転劇の裏には今大会悩まされ続けていたフランスの課題があった。
前線3枚をカウンターに置き、カンテ・ラビオで回収したらエムバペを中心にショートカウンターで崩していくスタイル。
だがこの3枚が特にプレスをかけることはなく、中盤は絞って中を消す傾向にあるため、カンテが自由にプレスをかけに行くことが出来ずカウンターが上手く作れていなかった。
そんな状態で、ポゼッションを得意とするスペインの最終・アンカーラインにプレスがかからなければ、フランスの前線と中盤にポケットが出来るため縦パスは入れ放題になっていた。
両方の得点のシーンを見ても、ダニ・オルモだけでなく普段ワイドに張るヤマルも中間ラインに入ってきていることが分かる。
2失点目も縦パスを簡単に許すあまり、SBのヘススナバスが高いポジションを取れている。
2-1となってからは完全にスペインのペース。フランスのシステムの穴をついたポゼッションで支配し続け、フランスもジルー等交代枠を切るも特に具体的な解決策にはならず。
チームとして仕上がりを見せていたスペインに軍配が上がった。
この盤石なスペインをイングランド・オランダのどちらかが崩すことは出来るのか。